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タイで暮らす、あるいは短期滞在する日本人の中には、善意や軽い気持ちで行った行為が、実は「就労」に該当してしまうケースが少なくありません。
「無給だから大丈夫」「日本の口座に振り込まれるから問題ない」──こうした思い込みは、タイの労働法では通用しません。
タイでは報酬の有無や支払い場所に関係なく、肉体や知識を使って行う活動はすべて就労とみなされ、違反すれば罰金・強制送還・再入国禁止といった重い処分を受ける可能性があります。

💼 就労に該当する典型例

  • 会社や店舗での勤務(正社員・アルバイト・日雇い問わず)
  • 講師・指導・パフォーマンス(語学教師、スポーツコーチ、音楽演奏など)
  • イベント・展示会での運営や設営(ブース説明員、通訳、販売員)
  • 商談や営業活動(契約交渉、顧客訪問、商品説明)
  • インターンシップや研修(教育機関の公式プログラム以外、有償・無償問わず)
  • オンライン業務でも、タイ国内で作業し報酬を得る場合は原則対象

📝 就労に当たらないとされる例(労働省通達ベース)

※あくまで「参加者」や「見学者」としての立場に限られます

  • 会議・セミナー・講演会への聴講参加
  • 企業視察や商談への参加者(セッティングや運営側は就労扱い)
  • 展示会・見本市の見学者購買者
  • 自社取締役会への出席(2015年以降、非就労扱いに追加)

⚠️ グレーゾーンと注意点

  • 同じ行為でも立場や関与度によって就労扱いになることがあります
    例:セミナーで登壇すれば就労、聴講だけなら非就労
  • 15日以内の短期業務でも「緊急業務届」が必要
  • 15日を超える場合は労働許可証(Work Permit)必須
  • 外国人禁止業種(観光ガイド、露店販売、タイ語タイピングなど)では、そもそも許可が下りません

実務的アドバイス

  • 「報酬なし」「短期間」でも油断しない
    → 入管や労働局は「実態」で判断します
  • 事前にビザとWPの要否を確認
    → 雇用主や依頼主任せにせず、自分でも調べる
  • 証拠を残す
    → 緊急業務届や許可証のコピー、申請書類は必ず保管

🇹🇭 日本人がやりがちな無自覚就労パターン集

パターン典型的な状況なぜ就労扱いになるか実際の摘発・注意例
観光ビザでの語学教師観光ビザやノービザで日本語・英語を教えるビザ種別が就労目的でない/労働許可証なし語学学校や個人レッスンで摘発事例あり
ボランティア名目の無給労働学校・孤児院・店舗で「手伝い」や指導賃金の有無に関係なく労働と見なされる孤児院での無許可活動が指摘された例
イベント・展示会での説明員見本市や観光イベントでブース対応商品説明や接客は労働行為日系企業ブースでの短期手伝いが摘発対象に
飲食店・店舗での接客や調理補助知人の店で短時間だけ手伝う接客・調理は外国人禁止職種に含まれる場合ありバーでの接客やレジ打ちで検挙例
ミュージシャンの無許可演奏バーやレストランで演奏しチップを受け取る芸能活動も労働に該当2025年2月、パーイで外国人4名が逮捕
オンライン業務の国内作業日本の会社からの依頼をタイ国内で作業作業場所がタイ国内なら就労扱いIT・翻訳業務でも労働許可証が必要
社内会議や商談での発言・交渉タイ支社や現地企業で契約交渉実務的な意思決定や営業行為は就労「会議参加だけ」のつもりが交渉で就労認定

⚠️ よくある誤解

  • 「無給だから大丈夫」 → タイでは報酬の有無は関係なし
  • 「日本の口座に振り込まれるからOK」 → 支払い場所も関係なし
  • 「短期間だから不要」 → 15日以内でも「緊急業務届」が必要

実務的な防衛策

  1. 事前にビザと労働許可証の要否を確認(雇用主任せにしない)
  2. 活動内容を記録(依頼内容・期間・報酬有無)
  3. 禁止職種リストを把握(観光ガイド、露店販売、タイ語タイピング等)

🗺 日本人がやりがちな無自覚就労「落とし穴マップ」

危険度ゾーン典型的な行為無自覚ポイント法的リスク
🔴 即アウト(高リスク)観光ビザで語学教師/飲食店接客/イベント説明員「短期だから」「無給だから」大丈夫と思いがち労働許可証なし就労 → 罰金5万B+強制送還+雇用主罰金最大10万B
🟠 グレー(中リスク)ボランティア名目の活動/オンライン業務をタイ国内で実施「日本の口座に振込だからOK」と誤解賃金の有無・支払場所は不問。実態で就労認定
🟡 注意(低〜中リスク)会議・商談での発言や契約交渉/短期研修「見学だけのつもり」が実務参加に発展実務関与で就労扱い。15日以内でも緊急業務届が必要

📌 無自覚就労の典型シナリオ

  1. 観光ビザで友人の店を手伝う
    → 接客・調理は外国人禁止職種に該当する場合あり
  2. 孤児院での無償指導
    → 善意でも労働と見なされる
  3. 展示会で商品の説明
    → 接客・販売行為は就労
  4. タイ滞在中に日本企業の案件をリモート作業
    → 作業場所がタイ国内なら就労扱い

🛡 実務的防衛策

  • 活動内容を事前に棚卸し(発言・作業・接客の有無)
  • ビザ種別と労働許可証の整合性確認
  • 禁止職種リストの把握
  • 短期でも届出を怠らない

【参考】[1] タイ労働法・外国人就労規制解説(青木瞬「タイで不法就労者を見極める方法」)

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