
「乗っ取られました」は言い訳にならない時代へ
〜SNSの乗っ取りにご注意〜
「え、これって本当に本人?」
そんな疑念を抱いたことがある人は、すでにSNSリテラシー上級者かもしれない。だが、世の中には「親からLINEが来たから信じた」「映画監督からオファーが来たから飛んだ」という人が、まだまだいる。そしてその結果、監禁されたり、詐欺に加担させられたりしている。
今回は、そんな“乗っ取り地獄”の実例と、あなたのアカウントが明日乗っ取られないための対策を、少し皮肉を込めてお届けしよう。
「映画に出ませんか?」→監禁されました
2023年、タイで実際に起きた事件。中国人俳優・王星さんは、映画関係者から「新作映画に出演してほしい」とSNS経由でオファーを受けた。相手は業界で名の知れた人物。過去にやり取りもあった。疑う理由はなかった。
だがそのアカウント、乗っ取られていた。
王星さんはタイに渡航し、指定された場所へ向かう。そこから先は地獄だった。
パスポートを没収され、髪を剃られ、制服を着せられ、電気警棒で脅されながら「特殊詐欺の訓練」を強制される。詐欺電話のロールプレイ、ロマンス詐欺の脚本暗記、食事抜きの罰。まるでブラック企業の新人研修だが、これは犯罪だ。
数日後、現地当局の連携で救出されたが、同様の手口で騙された被害者は多数。日本人もカンボジアで似たような求人詐欺に遭い、監禁された事例が報道されている。
「乗っ取り」は、ただのログイン問題じゃない
SNSの乗っ取りというと、「勝手に投稿された」「変な広告が流れた」くらいに思っている人が多い。だが、実際はもっと深刻だ。
- あなたの名前で友人に金銭要求が飛ぶ
- あなたの顔で詐欺が行われる
- あなたの信用が、数時間で崩壊する
そして何より厄介なのは、「本人が否定しても、信じてもらえない」ことだ。
「乗っ取られました」は、もはや言い訳にならない。むしろ「乗っ取られるような管理をしていたのか」と、信用がマイナスになる時代だ。
よくある乗っ取りパターン
あなたのアカウントが明日乗っ取られるかもしれない。以下のどれかに心当たりがあれば、すでに“予備軍”だ。
🕸️ フィッシングリンク
「ログインしてください」「アカウント確認のため」などと書かれた偽サイトに誘導され、IDとパスワードを入力させる。見た目は本物そっくり。スマホで見ればなおさら判別不能。
📱 SIMスワップ
電話番号を乗っ取られる手口。SMS認証が突破され、二段階認証も意味を失う。タイでは携帯ショップの店員がグルになっているケースも報告されている。
☕ 公共Wi-Fi経由の盗聴
カフェや空港の無料Wi-Fiでログインした瞬間、通信が盗まれる。「無料ほど高いものはない」とはよく言ったものだ。
🎮 アプリ連携の罠
「あなたの性格は〇〇タイプ!」みたいな診断系アプリにログインした結果、アカウント情報が抜かれる。あなたの性格より、あなたの個人情報の方が価値がある。
いますぐできる防衛策
「乗っ取られたらどうしよう」では遅い。乗っ取られる前に、以下を実行しよう。
- 二段階認証を設定(SMSより認証アプリ推奨)
- パスワードの使い回しをやめる(123456は論外)
- アプリ連携を見直す(不要なものは削除)
- 公共Wi-Fiではログインしない(VPNを使うか、そもそも使わない)
そして何より、「好条件のオファーほど疑う」こと。
「映画出演」「高収入の仕事」「無料プレゼント」——それ、全部あなたを釣るための餌かもしれない。
乗っ取られたらどうするか
それでも乗っ取られたら、冷静に以下を実行しよう。
- すぐにパスワード変更
- サポートに連絡(LINE、Instagram、Facebookなど)
- 友人・家族に「乗っ取られた」と周知
- 被害が出た場合は警察へ(タイならTechnology Crime Suppression Division)
そして、乗っ取られたことを「ネタ」にするのは最後の手段だ。笑えるうちはまだいい。笑えない事態になる前に、対策を。
終わりに:あなたのSNSは“資産”であり“責任”
SNSは、ただの暇つぶしではない。仕事の連絡、家族との会話、信用の証明。あなたのアカウントは、あなた自身の分身だ。
だからこそ、「乗っ取られました」は、もはや通用しない。
「乗っ取られないようにしてましたか?」と問われる時代だ。
最後にもう一度言おう。
「親からLINEが来たから信じた」ではなく、「親でも疑う」が、これからのSNSリテラシーだ。