
気をつけろ、日本人。あなたの“人の良さ”は市場価値が高い。
タイは「微笑みの国」と呼ばれる。だが、その笑顔がいちばん輝くのは、あなたの財布のチャックが開いた瞬間かもしれない。近年のタイは、ネット詐欺・電話詐欺・投資詐欺・恋愛詐欺・慈善詐欺…と、まるで「詐欺ブッフェ」のように種類が豊富だ。
しかもやっかいなのは、詐欺師たちが“悪人面”をしていないこと。むしろ愛嬌とユーモアに満ちあふれていて、会った瞬間に「えっ、いい人じゃん」と思わせてくる。これが罠の第一歩だ。
では、そんな国で日本人がどうすれば騙されずに生き延びられるのか。
結論から言うと――秘策は「疑い深さを装う習慣」だ。
タイでは“人を信用しすぎる人間”ほど、いいカモとして高く売れる。
以下では、タイ在住者が日常的に遭遇する「巧妙な罠」と、それを回避するための“習慣としての疑い深さ”を紹介していく。
■その①:優しさを「好意」だと思わない
タイ人は基本的に優しい。声も柔らかい。怒鳴らない。距離感が近い。
そして日本人は、他人から優しくされるとすぐ“信頼ポイント”を付与してしまう。
ここで一つ、残酷な真実を伝えたい。
タイ人の優しさは、関心の証ではない。文化的デフォルト設定だ。
たとえば、笑顔で近づいてきて「兄さん、困ってる?手伝うよ」と言われても、それが“善意”である保証はどこにもない。
タイでは「親切のフリ」は詐欺の基本スキルであり、まるで日本の学校で教える“九九”のような初歩科目だ。
秘策:
優しい人ほど、一段階だけ距離を置く癖をつける。
「優しい=信用できる」は捨てる。
■その②:タイ語が分からなくても、雰囲気に流されない
詐欺師は、あなたがタイ語に弱いとわかると、
「タイ語の早口で押し切る攻撃」
に切り替える。
これ、日本人に特に効く。
なぜなら日本人は“自分の理解力が足りない”と錯覚し、相手のペースに合わせようとしてしまうからだ。
だが詐欺の世界では、理解できないことは大体危険だ。
タイ語でまくし立てられ、何がなんだか分からないときは――逃げろ。
秘策:
「理解できない=サインアウト」。
分からないものからは離脱する、これが命を守る。
■その③:日本語のうまいタイ人を過信しない
日本語がペラペラなタイ人は、ときに日本人より日本人らしい。
「え!そんな言い回しまで分かるの?」というレベルの人も多い。
だが、ここに盲点がある。
日本語がうまい人は、日本人心理の弱点もよく理解している。
「この言い方なら安心する」「この振る舞いならなついてくる」
そんな“攻略マニュアル”を持っていると思ったほうが良い。
もちろん、本当に善良な人もいる。
問題は区別が難しいことだ。
秘策:
流暢すぎる日本語には、流暢な警戒心を。
■その④:2回目までは絶対にカネを渡さない
詐欺でいちばん多い手口は「小額で信頼を作って、大金を取る」という古典パターンだ。
・最初の少額はちゃんと返す
・次も返す(これで信用が完成)
・そのあとでドカンと持っていく
この三段コンボは、タイでも常套手段だ。
とくに“知り合いの紹介”や“親戚が困っている”というストーリーまで付いてくると、日本人はコロッといく。
秘策:
どんなに良い人でも、どんなに可哀想でも、「二回目のお金」は渡さない。
詐欺の本番はいつだって三回目だ。
■その⑤:投資話・ビジネス話は99%フィクション
「簡単に儲かる」「最初だけ手伝って」
この二つの言葉に日本人は弱い。
タイには、
・暗号通貨
・不動産
・謎の工場の分配金
・“将来値上がりする”石、金属、骨董
・投資アプリ
など、夢を売る詐欺ジャンルが山ほどある。
詐欺にかかる日本人は決まってこう言う。
「彼(彼女)は誠実そうだった」
「そんな悪い人には見えなかった」
そこで一つだけ潔く言い切りたい。
悪い人は悪い人の顔をしていない。
善人の仮面をかぶるから、詐欺が成立するのだ。
秘策:
「絶対儲かる」は絶対詐欺。
“限定枠”や“今日だけ”と言われたら、笑って帰る。
■その⑥:法的手続きに頼れると思わない
日本人は「最後は警察」「証拠があれば勝てる」というロジックに慣れている。
ところがタイでは、詐欺の多くが“民事扱い”になり、
「返金を約束したから事件性なし」
と片付けられることも多い。
つまり、だまされた時点で負け確だ。
司法の強さをアテにしてはいけない。
秘策:
予防がすべて。
「被害にあってから戦う」という発想自体がアウト。
■その⑦:恋愛詐欺には、余計に注意
タイの恋愛詐欺は、クオリティが高い。
本当に高い。
演技力・距離感・依存の作り方がプロフェッショナル。
日本人男性がやられる理由は単純で、
・優しくされることに慣れていない
・頼られると弱い
・異文化ロマンスに酔いやすい
この3つが見事に組み合わさってしまうからだ。
秘策:
「彼女の事情」は8割が脚本。
“突然のトラブル”は9割が演出。
■結論:タイで騙されない秘策とは、「自分の日本人的やさしさ」を理解すること
日本人は、世界的に見て“信用しやすい民族”だ。
これは悪いことではないが、タイでは特に狙われやすい。
最強の防御は、
「自分の性質を知ること」だ。
・優しくされると信じてしまう
・困っていると言われると助けてしまう
・褒められると心を開いてしまう
・曖昧なまま契約してしまう
この“日本人らしさ”を自覚することこそ、タイでの生存戦略になる。
詐欺を100%避ける方法はない。
だが、“疑い深さを装う習慣”を身につけるだけで、生存率は一気に上がる。
かつてある在住者がこう言った。
「タイで生き残るコツは、笑顔を返しつつ、心の中で財布に鍵をかけておくこと」
微笑みの国では、微笑みだけを信用してはいけない。
本当に信用すべきは、自分の警戒心だ。
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