
【タイ移住のリアル】旅の「奇跡」から生活の「マイペンライ」へ。暮らして見えた、タイの本当の優しさと付き合い方
タイに初めて降り立ったとき、あるいは移住したばかりのとき、言葉も通じなくて、目の前の景色すべてに圧倒されて不安になったこと、ありませんか?
「タイマニ」のメンバーからも、よく「最初の頃は毎日が緊張の連続でした」「日本語で相談できる場所がなくて心細かった」というお声をいただきます。
本当にそうですよね。私も全く同じでした。
今回は、そんな誰もが一度は通る「旅先のキラキラ」と「タイで暮らす現実」の狭間で、私が気づいた“ある真実”についてお話しします。
旅先では、だいたい全部が“奇跡”になる
旅先では、日常なら見逃すようなことまで、やけに輝いて見える。
Googleマップの青い丸が勝手に動き、自分がどこにいるかもわからない。そんなとき、タイの路上でおじさんが寄ってきて、言葉も通じないのにスマホを覗き込んで道を指し示してくれる。その方向がたとえ間違っていたとしても、旅人の胸には言いようのない温かさが残るのだ。
そう、あの瞬間の嬉しさったらありませんよね。
「なんて優しい国なんだろう!」と、心の中で感動的なBGMが流れ、タイという国全体がまるで奇跡の塊のように思えてしまう。
でも、これって実は、私たちの「受信感度」がマックスに上がっているからでもあるのです。
旅先で私たちが「奇跡」と呼びたくなる、小さな出来事たち:
- 屋台のおばちゃんが、なぜかおかずを少し大盛りにしてくれた
- コンビニの店員さんが、お釣りを渡すときにニッコリ微笑んでくれた
- 突然のスコールで雨宿りしていたら、知らないお姉さんが椅子を詰めてくれた
これらは本当に温かい出来事。でも、日本で同じことがあっても「親切な人だな」で終わるかもしれません。
パスポートを持つと、私たちは少しだけ詩人になってしまう。だからこそ、すべての出来事が「人生の宝物」のように思えていたのです。
でも暮らすと、“自由”はたまに牙を剥く
ところが、旅では美しく見えたものも、暮らしになると少し表情を変える。
旅人にとって、バスが遅れるのは「南国の味」だ。しかし、生活者にとって、約束の時間に修理業者が来ないのは、ただの死活問題である。
「もうすぐ着くよ」
この言葉の「もうすぐ」は、時に数時間に及ぶ。
宇宙の起源について思索を巡らせるほどに、時間は虚無へと消えていく。なぜ私は、午前中からずっとこの壊れた洗濯機の前で待ち続けているのだろうか。
ここで登場するのが、良くも悪くもタイを象徴する魔法の言葉「マイペンライ(大丈夫、気にしないで)」。
旅人として聞くマイペンライは、肩の力を抜いてくれる極上のスープのよう。
しかし、生活者として聞くマイペンライは、時にこう聞こえてしまうのです。
「細かいことは、いったん宇宙に預けましょう」
いやいや、私の洗濯機はまだ直っていないのですが……!
この「マイペンライ」の洗礼に、最初の頃は「もうどうしたらいいの!」と、日本語で叫びたくなった夜が何度あったことか。
優しさの正体と、タイの「ナムジャイ」
タイに暮らして数年が経ち、私はようやく気づいた。
あの旅先での優しさは、嘘ではなかった。
ただ、それを「タイ人はみんな優しい」と一括りにするのは、こちらの都合のいい幻想だったのだ。
タイの人々にも当然、生活がある。
満員電車のストレスもあれば、バンコク名物の、人の悟りを試すような大渋滞もある。全員が毎朝、ディズニープリンセスのようにハッピーに目覚めるわけがない。
あの優しさは、「国全体の奇跡」ではなく、「その人が、その瞬間に、たまたま自分に向けてくれた、生の温もり」だった。
そう考えると、むしろその一瞬が、愛おしくてたまらなくなる。
タイには「ナムジャイ(思いやり・水のような心)」という美しい言葉があります。
日本の一期一会が、
「二度とないかもしれないから、完璧に丁寧にする」
だとしたら、
タイのナムジャイは、
「今ここに一緒にいるから、ちょっと手を差し伸べる」
という感じ。
この、重すぎず、でも冷たくもない絶妙な距離感。これこそが、私たちがタイに惹かれてやまない理由なのかもしれません。
それでも、あの出会いを愛おしむ
暮らしてみると、旅のキラキラは少し落ち着きます。
タイにも現実があり、不便もあり、曖昧さに疲れて「今日はマイペンライじゃない!」と言いたくなる日もあります。
でも、それでいいのです。
現実を知ったからこそ、あの時もらった優しさが、より立体的で、本物として胸に響くようになりますから。
「この国はなんて素晴らしいんだろう」という大きな感動から、
「あのときのあの人、ありがたかったな」という小さな感謝へ。
そのほうが、きっと心に長く、優しく残り続けます。
今日もGoogleマップの青い丸は、あさっての方向を向いている。
でも、まあ。
マイペンライ。
たぶん、なんとかなりますよね。
皆さんの「マイペンライに救われた(あるいは泣かされた)エピソード」も、ぜひコメントで教えてくださいね!
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