タイで資産を持つ=自由に使えるとは限らない

タイで資産を持つ=自由に使えるとは限らない ― 凍結リスクの実例

こんにちは。バンコクに住んで十数年になる日本人です。
この記事では、タイでの生活や老後ビザ、現地採用のリアルな事情なんかを、ちょっと辛口に、でもカジュアルに書いています。

さて、今回のテーマは「資産凍結リスク」。
タイで暮らす日本人の多くが「老後はコンドを買って、銀行口座にお金を置いて、悠々自適」と夢を描きます。でも実際には、資産を持っている=自由に使えるとは限らないんです。

今日は、僕の周りで実際に起きた事例を交えながら、この“凍結リスク”について掘り下げてみます。

銀行口座は「死んだ瞬間にロック」

まずは銀行口座の話。
タイで暮らすなら、現地銀行に口座を持つのは必須です。給料の振込、家賃、光熱費、全部そこから回す。僕もバンコク銀行とカシコン銀行に口座を持っています。

ところが、ある知人(70代の日本人男性)がチェンマイで急逝したとき、家族が直面したのは「口座凍結」。
死亡届が出された瞬間に、銀行は自動的に口座をロック。残高は数十万バーツあったのに、遺族は1バーツも引き出せない。

銀行に泣きついても「裁判所の遺産管理人任命命令(Court Order)が必要です」の一点張り。
つまり、タイの裁判所で「この人が遺産を管理していい」と認められない限り、口座は開かない。

弁護士を雇って裁判所に申請するのに、費用は20〜30万バーツ。時間は半年以上。
結局、家族は「そこまでして取り戻す価値があるのか」と悩み、泣く泣く放棄したそうです。

教訓:銀行口座は“死んだ瞬間に金庫化”する。

コンドミニアムは「相続で宙に浮く」

次は不動産。
バンコクで暮らしていると「賃貸は不安定だから、コンドを買った方が安心だよ」と言う人がいます。確かに、大家の横暴に振り回されないのは大きなメリット。

でも、死んだ後のことを考えると、これもまたリスク満載。

僕の知人で、バンコク中心部にコンドを所有していた日本人男性が亡くなったときの話。
相続人は日本に住む奥さんと子どもたち。ところが、名義変更をしようとしたら「タイの裁判所で遺産管理人を選任しないとダメ」と言われた。

つまり、相続人が日本人であっても、タイの裁判所を通さないと名義変更できない。
その間、物件は売ることも貸すこともできず、半年以上“宙に浮いた資産”になった。

しかも、相続人がタイ語を話せないから、弁護士を遺産管理人に選任。費用は数十万バーツ。
「持ってるのに動かせない」って、まさに凍結ですよね。

教訓:コンドは“死んだ瞬間に不動産ロック”がかかる。

売却益が「国外に出せない」

さらに怖いのが、規制と書類の問題。

ある日本人がコンドを売却して、日本に資金を戻そうとしたときのこと。
銀行から「購入時の送金証明書(Foreign Exchange Transaction Form)を出してください」と言われた。

この書類、購入時に国外から送金した証明なんですが、紛失していた。
結果、売却益を日本に送金できず、タイ国内でしか使えない状態に。

「いやいや、俺の金だろ!」と叫んでも、銀行は「規則です」の一点張り。
結局、その人は売却益をタイ国内で消費するしかなかった。

教訓:書類一枚なくすと、資産は“国外送金ロック”される。

日本人が陥りやすい誤解

ここまで読んで「そんなのレアケースでしょ」と思う人もいるかもしれません。
でも、実際に僕の周りだけでこれだけの事例がある。つまり、珍しい話じゃないんです。

日本人は「契約で守られる」「銀行は顧客を守る」という感覚を持っている。
でもタイでは、制度は“守るため”じゃなく“縛るため”にある
死んだら口座は縛られる。相続は裁判所に縛られる。送金は書類に縛られる。

「持ってるのに使えない」――これが資産凍結リスクの正体です。

じゃあどうすればいいの?

僕が思うに、対策はシンプル。

  • 銀行口座は必要以上に残高を置かない
  • 遺言書を日本とタイの両方で用意する
  • コンド購入は“最後まで住む覚悟”がある人だけ
  • 送金証明書などの書類は死ぬまで死守
  • 最悪は“戻れる日本の拠点”を残しておく

要は「資産を持つ=安心」じゃなくて、「資産を持つ=リスク管理が必要」と考えること。

まとめ:資産は「持つ」より「動かせるか」

タイで暮らしていると、日本人がよく「老後はコンド買って、銀行にお金置いて、悠々自適」と夢を語るのを聞きます。
でも現実は、資産は持っていても自由に使えるとは限らない

死んだら口座はロック。
相続で不動産は宙に浮く。
書類をなくせば送金できない。

だから僕は、こう考えるようにしています。

「資産は“持つ”ことより、“動かせるか”が大事」

老後ビザを考える人にとって、この視点を持つかどうかで、安心度はまるで違う。
タイで暮らすなら、ぜひ覚えておいてください。

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