
目次
- 記事の導入:なぜ今、TM30を知るべきなのか?
- TM30とは?タイ滞在者が知るべき基本
- 【完全網羅】TM30の届け出が必要になる全ケース解説
- 実践ガイド:TM30の届け出方法と必要書類
- トラブルシューティングとよくある質問(FAQ)
- まとめ:TM30を正しく理解し、快適なタイ滞在を
なぜ今、TM30を知るべきなのか?
タイに中長期で滞在する、あるいは移住を計画している外国人にとって、避けては通れない行政手続きの一つが「TM30」です。ビザの延長や90日レポートの提出のために意気揚々と入国管理局(イミグレーション)へ向かったものの、窓口で「TM30の控えがありません」と突き返され、途方に暮れた経験をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。
この制度自体は、実は1979年から存在する古い法律なのですが、2019年頃からタイ政府がその運用を突如厳格化し、多くの在タイ外国人の間で大きな混乱を巻き起こしました。それまでほとんど意識されることのなかったこの届け出が、今やタイでの安定した滞在を左右する重要な鍵となっています。
ホテル滞在の短期旅行者には馴染みが薄い一方で、アパートやコンドミニアムを借りる長期滞在者、タイ人のパートナーや友人の家に住む人、さらには自身で物件を所有する人まで、タイに「住む」すべての外国人がこの制度と無関係ではいられません。その複雑さと、状況によって異なる対応が求められることから、「一体、自分の場合はいつ届け出が必要なのか?」という核心的な疑問が絶えません。
この記事では、その根本的な疑問に答えるべく、TM30の届け出が必要となるあらゆるケースを網羅的に、そして具体的に解説します。基本的な定義から、見落としがちな再入国時の手続き、ホテルやAirbnb滞在時の注意点、さらには実践的な届け出方法やトラブル対処法まで、これ一本を読めばTM30に関する不安や疑問が解消される「決定版ガイド」として、詳細に掘り下げていきます。
TM30とは?タイ滞在者が知るべき基本
TM30の具体的なケーススタディに入る前に、まずはその基本的な概念、法的根拠、そしてなぜこの手続きが外国人滞在者にとってこれほどまでに重要なのかを理解することが不可欠です。このセクションでは、TM30に関する知識の土台を固めます。
TM30の定義:その正式名称と本質
一般的に「TM30」と呼ばれるこの届け出の正式名称は、「Notification from House-Master, Owner or the Possessor of the Residence where Alien has Stayed」です。日本語に訳すと「外国人が滞在した住居の家主、所有者または占有者からの通知」となります。
この名称が示す通り、TM30の本質は「タイ国内のどこに、どの外国人が滞在しているかを、その住居の提供者が入国管理局に報告するための制度」です。タイ政府が国内に滞在する外国人の動向を把握し、安全保障や不法滞在の防止に役立てることを目的としています。テロ対策や国際犯罪組織の摘発といった、より大きな国家安全保障の文脈で位置づけられているのです。
「TM30」という名称は、この届け出に使用される公式フォームの番号「ตม. ๓๐」に由来します。タイの入国管理局が使用する各種フォームには、90日レポートの「TM47」や再入国許可申請の「TM8」など、同様の番号が振られており、TM30もその一つです。

法的根拠:1979年移民法第38条という「義務」
TM30の届け出義務は、仏暦2522年(西暦1979年)に制定された移民法(Immigration Act, B.E. 2522)の第38条に明確に規定されています。この条文がすべての根拠となります。
"House owners, heads of household, landlords or managers of hotels who accommodate foreign nationals on a temporary basis who stay in the kingdom legally, must notify the local immigration office within 24 hours from the time of arrival of the foreign national."
(訳:合法的に王国に滞在する外国人を一時的に宿泊させる家主、世帯主、家主またはホテルの管理者は、当該外国人の到着から24時間以内に、管轄の入国管理事務所に通知しなければならない。)
出典: Hero Realtor, 日本橋夢屋
この条文の重要なポイントは、届け出が「お願い」や「推奨」ではなく、法律によって定められた明確な「義務(obligation)」であるという点です。そして、その義務を負うのは滞在する外国人本人ではなく、あくまで住居を提供する「家主」側であることが明記されています。この「責任の所在」が、後述する多くのトラブルの原因ともなっています。
届け出義務者と期限:責任は誰に?いつまでに?
移民法第38条に基づき、TM30の届け出義務を負うのは以下の人々です。
- 家の所有者(House Owner):コンドミニアムや一軒家のオーナー。
- 世帯主(Head of Household):住居登録証(タビアンバーン)上の世帯主。
- 家主(Landlord):物件を賃貸している大家。
- ホテルの管理者(Manager of Hotel):ホテルやサービスアパートメントの支配人。
要するに、「外国人に寝泊まりする場所を提供した責任者」が届け出を行う必要があります。たとえ家賃が発生しない友人宅への滞在であっても、その家の所有者である友人が法的な届け出義務者となります。罰金が科される対象は、原則としてこの届け出義務者です。
そして、届け出には厳格な期限が設けられています。
期限:外国人がその住居に到着(入居)してから24時間以内
この「24時間以内」という非常に短い期限が、手続きを複雑にする一因です。特に、週末や祝日を挟む場合や、家主が遠隔地に住んでいる場合など、物理的に期限内の届け出が困難なケースも想定されますが、法律上の規定は揺るぎません。
なぜ外国人にとって重要なのか:滞在資格に直結する生命線
「届け出の義務は家主にあるのなら、なぜ外国人である私たちがこんなに気にしなければならないのか?」これは最もな疑問です。しかし、現実にはTM30の届け出状況が、外国人自身のタイにおける法的な立場、すなわち滞在資格に直接的な影響を及ぼします。
2019年以降の運用厳格化により、タイの入国管理局は以下の主要な手続きにおいて、TM30が正しく届け出られていることを必須の確認事項としました。
- ビザの延長(Extension of Stay):リタイアメントビザ、就労ビザ、学生ビザなど、あらゆる種類のビザ延長申請時に、TM30の受理控えの提示を求められます。これがなければ、申請が受理されないか、30日間の「審査中」スタンプが押されるだけで、完全な延長が許可されないといった事態に陥ります。
- 90日レポート(TM47)の提出:タイに90日以上連続して滞在する外国人に義務付けられている居住地報告です。このTM47を提出する際にも、前提条件としてTM30の登録が確認されます。TM30が未登録だと90日レポートの受理も拒否されるケースが頻発しています。
- 再入国許可(Re-Entry Permit)の申請:マルチプルの再入国許可を取得する際にも、居住地が確定している証明としてTM30が参照されることがあります。
- その他の行政手続き:上記以外にも、以下のような手続きで居住地を証明する書類としてTM30の控えが役立つ、あるいは要求されることがあります。
- 居住証明書(Certificate of Residence)の発行
- 銀行口座の開設
- 運転免許証の取得・更新
- 病院での保険手続きなどで必要になったという報告もあります。
このように、TM30はもはや単なる「家主の義務」ではなく、外国人がタイで合法的に生活を続けるための「インフラ」の一部と化しているのです。家主が届け出を怠った場合、罰金を支払うのは家主ですが、ビザが更新できずに困るのは外国人本人です。この「責任と影響のねじれ」こそが、TM30問題の核心であり、私たち外国人が自衛のために制度を深く理解しなければならない理由なのです。

【完全網羅】TM30の届け出が必要になる全ケース解説
TM30の基本を理解したところで、このセクションでは本題である「いつ、どのような状況で届け出が必要になるのか」を、具体的なシナリオに沿って徹底的に解説します。ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてください。
ケース1:新しい住居に入居したとき(基本)
これは最も基本的で、すべての滞在の起点となるケースです。タイ国内で新たに住所を定めた場合、その形態に関わらずTM30の届け出対象となります。
賃貸物件(コンドミニアム、アパート、一軒家)
タイで生活する多くの外国人が該当する、最も一般的なシナリオです。コンドミニアムやアパート、一軒家などを賃貸契約して住み始めた場合、その物件のオーナー(大家)にTM30の届け出義務が発生します。入居者は、入居後速やかにパスポートのコピーなどの必要書類を大家に渡し、24時間以内に届け出をしてもらうよう依頼する必要があります。
【実践的アドバイス】
賃貸契約を結ぶ前に、不動産エージェントや大家自身に「TM30の届け出に協力的ですか?」と必ず確認しましょう。特に個人オーナーの場合、TM30の制度を理解していなかったり、手続きを面倒がったりするケースが散見されます。後々のビザ更新でトラブルにならないためにも、入居前の確認は極めて重要です。外国人慣れしている不動産エージェントや管理会社が間に入っている物件は、この点スムーズに進むことが多いです。
友人・恋人・家族の家に滞在するとき
家賃の支払いが発生しない、いわゆる「居候」のような形でタイ人の友人や恋人、あるいはタイに住む家族の家に滞在する場合も、TM30の届け出は必要です。この場合、法的な届け出義務者はその家の所有者である友人や家族になります。
「お金を払っていないから大丈夫だろう」という自己判断は通用しません。法律は、賃貸借関係の有無ではなく、「外国人がどこに宿泊しているか」という事実を基に適用されます。友人や家族には、TM30があなたのビザ更新に不可欠であることを丁寧に説明し、協力をお願いする必要があります。必要な書類(家の権利書コピーなど)を準備してもらい、手続きを進めましょう。
自身が所有する物件に住むとき
タイでコンドミニアムなどを購入し、自身が所有する物件に住む場合も、TM30の届け出義務から逃れることはできません。この場合、非常に興味深いことに、自分自身が「家主」兼「居住者」として、自分自身の滞在を届け出る必要があります。
これは「TM30のルールに例外はない」という原則を象徴するケースです。ビザの種類や物件の所有形態に関わらず、すべての外国人が対象となります。自分でオンライン申請を行うか、入国管理局の窓口に出向いて手続きを完了させる必要があります。
ケース2:タイ国外から再入国したとき(最重要注意点)
これは、長期滞在者が最も見落としがちで、トラブルに発展しやすい最重要ポイントです。
たとえ同じアパートやコンドミニアムに住み続けている場合でも、一度タイを出国し、日本への一時帰国や近隣国への旅行などを経てタイに再入国した際には、その都度、24時間以内にTM30の届け出が「新たに」必要になります。
多くの人が「住所は変わっていないのだから、届け出は不要だろう」と考えがちですが、入国管理局のシステム上、一度出国するとタイ国内の滞在許可が一旦終了し、再入国によって新たな滞在許可が付与されたと見なされます。そのため、その「新たな滞在」の居住地を改めて報告する必要があるのです。
"Whenever you leave the country, you must re-register upon your return."
(訳:国を離れるたびに、帰国時に再登録しなければならない。)
出典: Perfect Homes Chiang Mai
このルールを知らずに数ヶ月過ごし、次の90日レポートやビザ更新の際に「再入国後のTM30がありません」と指摘され、慌てて罰金を支払うことになるケースが後を絶ちません。特に頻繁に出張や旅行でタイを出入りする方は、毎回の手続きが必須であることを肝に銘じておく必要があります。大家さんに毎回依頼するのが難しい場合は、オンラインでの申請方法をマスターしておくことが賢明です。
なお、2020年の制度改革により、この再入国時の報告義務が緩和された時期もありましたが、現在の運用では依然として報告が求められるのが一般的です。地域の入国管理局によって解釈が異なる可能性もゼロではありませんが、安全策として「再入国時には必ず届け出る」と覚えておくのが最も確実です。
ケース3:ホテル、サービスアパート、Airbnbに宿泊するとき
短期的な滞在で利用される宿泊施設についても、TM30のルールは適用されます。ただし、その対応は施設の形態によって大きく異なります。
ホテル・サービスアパート
ホテルやサービスアパートメントなど、旅館業法(Hotel Act)のライセンスを持つ宿泊施設の場合、法律によって宿泊者の情報を入国管理局に報告することが義務付けられています。通常、チェックイン時にパスポートの提示(またはコピー)を求められるのは、このTM30の届け出のためです。
宿泊施設側がシステムを通じて自動的に届け出を行ってくれるため、宿泊者自身がTM30を意識する必要はほとんどありません。短期旅行者がTM30の存在を知らないままタイ旅行を楽しめるのは、この仕組みのおかげです。滞在中に複数のホテルを移動する場合も、各ホテルがチェックインの都度、届け出を行ってくれます。
Airbnb(民泊)
一方で、注意が必要なのがAirbnbなどの個人が貸し出す民泊施設です。法律上、Airbnbのホスト(貸主)にも、ホテルと同様に宿泊者(ゲスト)の情報を24時間以内に届け出る義務があります。Airbnbの公式ヘルプページでも、タイの移民法第38条に基づく届け出義務について言及されています。
しかし、問題は、すべてのホストがこの法律を遵守しているとは限らない点です。特に、副業的に部屋を貸している個人のホストの中には、TM30の制度自体を知らない、あるいは手続きを意図的に怠っているケースがあります。もし届け出がなされていない場合、そのAirbnbでの滞在を証明できず、後にビザ延長などの手続きで問題が生じる可能性があります。
【実践的アドバイス】
Airbnbを利用する際は、特に長期滞在の場合は、予約前やチェックイン時にホストに対して「外国人ゲストのためのTM30の届け出を行ってくれますか?」とメッセージで確認することをお勧めします。ホストからの返答が曖昧だったり、非協力的だったりする場合は、トラブルを避けるために別の宿泊先を検討するのも一つの手です。
ケース4:タイ国内旅行で別の県に滞在したとき
過去、TM30の運用が混乱していた時期に、多くの外国人を悩ませたのが「TM28」という別の届け出との関係です。TM28は、移民法第37条(4)で定められており、「居住地を離れて他の県に24時間以上滞在した場合、48時間以内に最寄りの警察署に届け出る」というものでした。
この規定が厳格に適用されると、例えばバンコク在住者が週末にパタヤへ一泊旅行した場合、パタヤでTM28を届け出て、バンコクの自宅に戻った際に再度TM30を届け出る、という非常に煩雑な手続きが必要になると解釈され、大きな批判を浴びました。
しかし、その後の運用の見直しにより、この点は簡素化されました。現在の一般的な解釈では、タイ国内の短期旅行で一時的にホテルなどに宿泊し、その後、登録済みの主たる居住地(バンコクの自宅など)に戻るだけであれば、TM30を再提出する必要はありません。TM28の届け出も、実際にはほとんど要求されません。
読者の混乱を避けるために要点をまとめると:
- 国外からの再入国 → TM30の再届け出が必須
- 国内旅行で一時的に他県に宿泊し、元の家に戻る → TM30の再届け出は原則不要
この違いを明確に理解しておくことが重要です。
ビザの種類による違い
最後に、ビザの種類によってTM30の要件が変わるのか、という疑問についてです。結論から言うと、ビザの種類による違いは一切ありません。
観光ビザ(Tourist Visa)、就労ビザ(Non-Immigrant B)、リタイアメントビザ(Non-Immigrant O-A)、学生ビザ(Non-Immigrant ED)、配偶者ビザ(Non-Immigrant O)、そして富裕層向けの長期滞在ビザであるタイランドエリートビザ(Thailand Elite Visa)やLTRビザ(Long-Term Resident Visa)に至るまで、タイに滞在するすべての外国人がTM30制度の対象となります。
タイランドエリートビザの保有者であっても、TM30の届け出義務は免除されません。ビザのステータスに関わらず、居住地を報告する義務は平等に課せられているのです。どのようなビザで滞在している場合でも、本記事で解説したケースに該当する際は、必ずTM30の手続きが必要となります。
実践ガイド:TM30の届け出方法と必要書類
TM30が必要なケースを理解したら、次は具体的な実践方法です。このセクションでは、届け出の3つの方法、家主と入居者がそれぞれ準備すべき書類、そして最も重要な「届け出の証明」を確保する方法まで、ステップ・バイ・ステップで詳しく解説します。
届け出の3つの方法:窓口・郵送・オンライン
TM30の届け出は、主に以下の3つの方法で行うことができます。それぞれにメリット・デメリットがあるため、家主の状況や緊急度に応じて最適な方法を選択します。
1. 移民局窓口で直接提出
これは最も確実で、その場で受理控え(半券)を受け取れる方法です。家主(または委任状を持った代理人)が、管轄の入国管理局の窓口に必要書類を持参して提出します。
- メリット:手続きがその場で完了し、即座に受理控えを入手できる。不備があればその場で修正できる。
- デメリット:入国管理局の営業時間内に出向く必要があり、時間と手間がかかる。混雑している場合は長時間待たされることもある。
バンコク都内であればバンコク入国管理局、地方であれば各県の入国管理局が管轄となります。入国管理局の支所がない地域では、最寄りの警察署に届け出ることとされています。

2. 郵送で提出
遠隔地に住む家主など、直接窓口に行くのが難しい場合に利用できる方法です。必要書類一式を、書留郵便(Registered Mail)で管轄の入国管理局に送付します。
- メリット:入国管理局に出向く必要がない。
- デメリット:受理控えが返送されるまでに数週間かかることがある。書類に不備があった場合、手続きが大幅に遅れる。受理控えを受け取るための切手を貼った返信用封筒を同封する必要がある。
急いで受理控えが必要な場合には不向きな方法と言えます。
3. オンラインで提出
現在、最も推奨される便利な方法が、入国管理局の公式ウェブサイトを通じたオンライン申請です。家主は一度アカウントを登録すれば、その後はいつでもオンラインで届け出ができます。
公式サイト: https://tm30.immigration.go.th/
- メリット:24時間いつでも、どこからでも申請可能。手続きが迅速で、受理されればすぐに証明をダウンロードできる。
- デメリット:過去にシステムが不安定で「登録したがログイン情報が届かない」「サイトがダウンしている」といった問題が多発した経緯がある(近年はシステムが刷新され、安定性が向上している)。初回のアカウント登録に多少の手間がかかる。
【オンライン申請の簡単な流れ】
- 公式サイトにアクセスし、家主がアカウントを登録(Register)。身分証明書や住居の書類のアップロードが必要。
- メールで送られてくる認証リンクをクリックし、アカウントを有効化。その後、ユーザー名とパスワードが記載されたメールが届く。
- ログイン後、宿泊施設の情報(住所など)を登録。
- 「Notification of residence for foreigners」メニューから、滞在する外国人の情報(氏名、国籍、パスポート情報など)を入力し、届け出を提出。
家主がPC操作に不慣れな場合は、入居者がサポートしてあげるとスムーズに進むでしょう。
必要書類チェックリスト(家主・入居者別)
TM30の届け出には、家主側と入居者側、双方の書類が必要です。事前に漏れなく準備しておくことが、スムーズな手続きの鍵となります。以下は、複数の情報源を基にまとめた一般的な必要書類リストです。
家主(オーナー)が準備する書類
- ✅ TM30申請用紙(窓口・郵送の場合)
- ✅ 家主の身分証明書(IDカード)のコピー(タイ人の場合)またはパスポートのコピー(外国人の場合)
- ✅ 住居登録証(タビアンバーン/Tabien Baan)のコピー または 物件の権利書(チャノート/Chanote)のコピー
- ✅ 賃貸契約書(Rental Contract)のコピー(賃貸の場合)
- ✅ 委任状(Power of Attorney)(代理人が申請する場合)
※すべてのコピーには、家主本人の署名(「原本と相違ない」旨の記載と共に)が必要です。
入居者(外国人)が準備し、家主に渡す書類
- ✅ パスポートの顔写真ページのコピー
- ✅ パスポートの最新のビザページのコピー
- ✅ パスポートの最新の入国スタンプが押されたページのコピー
- ✅ 出国カード(TM6)の番号(※TM6は多くの入国ポイントで廃止されましたが、過去のフォームや一部のシステムで要求される名残があります。わかる場合は伝えると親切です。)
※こちらも同様に、すべてのコピーに自身の署名(Certified True Copyとして)をしておくと丁寧です。
届け出の証明(受理控え)の取得と保管方法
TM30の手続きで最も重要なのは、届け出が受理されたことを証明する「控え」を確実に受け取り、保管することです。この控えがなければ、ビザ更新などの際に「届け出ている」と主張しても認めてもらえません。
証明となるものは、申請方法によって異なります。
- 窓口申請の場合:
「Receipt of Notification」と書かれた小さな紙片(通称:半券)が渡されます。これをパスポートにホチキスで留めてくれることが多いです。この半券が最も強力な証明となります。 - 郵送申請の場合:
同封した返信用封筒で、上記の「半券」が返送されてきます。 - オンライン申請の場合:
届け出が受理されると、システム上で受理された記録が確認できます。この画面が証明となります。- 受理画面のスクリーンショット:最も手軽な方法として、受理されたことがわかる画面のスクリーンショットを撮影し、画像として保存します。
- PDF形式でエクスポート:より公式な証明として、オンラインシステムの検索機能で自分の届け出記録を表示し、「Export」ボタンからPDFファイルとしてダウンロードすることができます。このPDFを印刷またはデジタルで保管しておくのが最も確実です。なお、システムの仕様上、検索できるのは直近の届け出に限られることがあるため、受理されたらすぐにダウンロードしておくことが重要です。
どの方法で取得した証明であれ、パスポートと一緒に大切に保管し、入国管理局へ行く際には必ず持参するようにしてください。スマートフォンの写真フォルダやクラウドストレージにデジタルコピーを保存しておくと、さらに安心です。
トラブルシューティングとよくある質問(FAQ)
TM30は複雑な制度であるため、多くの疑問やトラブルがつきものです。このセクションでは、よくある質問とその対処法をQ&A形式でまとめました。
Q1. 届け出が24時間を過ぎてしまったらどうなる?
A1. 法律上の期限は「24時間以内」ですが、現実には遅れてしまうケースも少なくありません。遅延した場合の影響は、届け出義務者である家主と、居住者である外国人で異なります。
- 家主への影響:
法律違反となり、罰金が科せられます。罰金額は法律上は最大10,000バーツとされていますが、実運用上は800〜2,000バーツ程度で済むことがほとんどです。遅延が発覚した時点で、速やかに届け出て罰金を支払う必要があります。 - 外国人(入居者)への影響:
直接的な罰金はありませんが、より深刻な影響があります。TM30が受理されるまで、ビザの延長や90日レポートの申請といった重要な手続きがストップしてしまいます。結果として、ビザの期限が迫っている場合にはオーバーステイのリスクに繋がる可能性もあります。遅れた場合でも、とにかく一日も早く家主に届け出てもらうことが最優先です。
Q2. 家主(大家さん)がTM30の届け出に協力的でない場合は?
A2. これは外国人にとって最も頭の痛い問題の一つです。以下のステップで対処を試みてください。
- 丁寧な説明と協力依頼:
まずは、TM30が単なる手続きではなく、あなたのビザ更新や合法的な滞在に不可欠な重要書類であることを丁寧に説明します。「罰金は大家さんにかかりますが、困るのは私なんです」という構造を伝え、協力を仰ぎましょう。 - 代理申請の提案:
大家が手続きを面倒がっている場合、大家から委任状(Power of Attorney)をもらい、入居者であるあなたが代理で申請を行うと提案する方法があります。これにより大家の負担は大幅に軽減されます。 - 不動産エージェントへの相談:
賃貸契約を仲介した不動産エージェントがいる場合は、事情を説明して大家への説得を依頼します。プロのエージェントであれば、TM30の重要性を理解しており、うまく間を取り持ってくれるはずです。 - 最終手段:
どうしても協力が得られない場合、残念ながらその物件での長期的な安定した滞在は難しいかもしれません。次のビザ更新のタイミングを見据え、より協力的な大家の物件への転居を検討する必要も出てきます。
Q3. 90日レポート(TM47)とは何が違う?
A3. TM30とTM47(90日レポート)は、どちらも入国管理局への届け出ですが、その目的と主体が異なります。混同されがちなので、明確に区別しましょう。
- TM30(居住地報告):
- 目的:外国人が「どこに住んでいるか」を登録する。
- 義務者:家主、ホテルの管理者など。
- タイミング:入居時、または国外からの再入国後24時間以内。
- TM47(90日滞在報告):
- 目的:タイに90日以上連続して滞在していることを「自己申告」する。
- 義務者:外国人本人。
- タイミング:90日間の滞在期間が満了する日の前後(15日前から7日後まで)。
重要なのは両者の関連性です。TM47(90日レポート)を申請するための大前提として、TM30によって居住地が正しく登録されている必要があります。つまり、「住んでいる場所(TM30)が報告されていなければ、そこに90日間滞在している報告(TM47)も受け付けません」というロジックです。
Q4. 短期旅行者もTM30を気にする必要がありますか?
A4. 滞在のすべてがホテルやサービスアパートであれば、基本的に気にする必要はありません。宿泊施設が自動的に手続きを行ってくれます。
ただし、以下のような場合は短期旅行者でもTM30が関係してきます。
- 滞在中に友人・知人宅に宿泊する場合:
その家の所有者にTM30の届け出義務が発生します。 - ビザなし滞在(30日)をさらに30日延長するために移民局に行く場合:
滞在延長申請の際に、宿泊先がTM30を提出した証明(ホテルのレシートや予約確認書と共に、TM30の控えを求められることがある)が必要になる場合があります。 - Airbnbに宿泊する場合:
前述の通り、ホストが届け出を行っているか確認した方が安全です。
短期滞在で、かつ入国管理局に行く予定が全くない場合は、問題が表面化することは少ないですが、制度の存在を知っておいて損はありません。
まとめ:TM30を正しく理解し、快適なタイ滞在を
本記事では、タイにおける外国人居住地報告制度「TM30」について、その基本から届け出が必要な全ケース、具体的な手続き方法、そしてトラブルシューティングまで、網羅的に解説してきました。
複雑で時に理不尽にさえ感じられるこの制度ですが、その核心を理解し、適切に対処することで、予期せぬトラブルを未然に防ぐことができます。最後に、快適なタイ滞在を送るために覚えておくべき最も重要なポイントを再確認しましょう。
TM30を乗り切るための3つの黄金律
- 「家主の義務」だが「自分の問題」と心得る:
法律上の責任は家主にありますが、その影響はビザを持つあなた自身に直接及びます。他人任せにせず、常に当事者意識を持って手続きの進捗を確認する姿勢が不可欠です。 - 2大必須シーン「入居」と「再入国」を忘れない:
数あるケースの中でも、「新しい住居への入居時」と「タイ国外からの再入国時」は、TM30の届け出が100%必要となる2大シーンです。この2つだけは絶対に忘れないようにしましょう。 - コミュニケーションと事前確認が最大の防御策:
物件を契約する前の大家との意思疎通、Airbnbホストへの事前確認、友人宅に泊まる際の丁寧な説明など、先を見越したコミュニケーションが、後々のストレスをなくす最善の策となります。そして、届け出後は必ず「受理控え」を確保し、大切に保管してください。
TM30は、タイが外国人滞在者の管理を強化する流れの中で、今後も重要な役割を果たし続けるでしょう。この制度を正しく理解し、味方につけること。それが、ビザ関連の不安から解放され、微笑みの国タイでの生活を心から楽しむための、確かな一歩となるはずです。
参考資料
[1]T.M. 30(トーモー30)について - npk1971
https://www.npk1971.com/t-m-30
[2]90日レポートオンラインサイト復旧。TM30もオンライン可能に。
タイ法務改正動向:Form TM30(外国人滞在報告)の提出義務簡素化
[4]大家さんにTM30 住居証明とってもらいました。GPTに聞いてみた
https://note.com/isoft2020/n/n8ff941a6ac2f
[5]Important Forms in Thailand for Foreigners: TM6, TM30, and More
What are the implications of not filing a TM30 within 24 hours of ...
[7]タイ 外国人を宿泊させた場合の届出 - 日本橋夢屋
https://www.tokutenryoko.com/news/passage/3083
[8]タイ From TM30(外国人の居住報告)について
外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用 | タイ - アジア - ジェトロ
https://www.jetro.go.jp/world/asia/th/invest_05.html
[10]住所申告制度(入出国カード、TM30、90日レポート)について
https://sabaijaicons.com/visa_90days.html
[11]The TM30 Notification in Thailand | ThaiEmbassy.com
https://www.thaiembassy.com/thailand-visa/about-tm30-thailand
[12] [13]THE TM30 FORM “What you need to know”
罰則強化!外国人の居住箇所を24時間以内に報告しなければ ...
タイのTM30基本情報 必要書類・罰金・アプリ・記入例 TM28
https://www.escape2bangkok.com/thiland-tm30
[17]在留資格認定証明書交付申請 | 出入国在留管理庁 - 法務省
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-1.html
[18]TM 30 - AAA Thai Language School
https://www.aaathai.school/tm-30
[19]How to Register Thailand's TM.30 - ALA Language School
TM30 Pattaya: Penalties, Rules & FAQs Explained
【2025年最新】タイ90日レポート(TM47)のオンライン申請 ...
https://bopeblog.com/thai90dayreport-guidance-new
[22]タイで外国人が出す住所届け3種類プラス1 – TM30、TM28、TM47
https://www.khwai-thailearning.com/notifications_form_of_address_in_thailand.html
[23]File Your TM.30 (or you won't get your full ED visa extension)
TM30 History And Regulation Developments: Crisis And Reform ...
https://thailawonline.com/tm30-history-and-regulation-developments-crisis-and-reform-2018-2020
[25]Simplifying the TM30 Process for Expats and Landlords
Important Immigration Forms in Thailand (TM30, TDAC, TM88, TM87 ...
[27]Do I need to register my address with immigration when staying at a ...
[28]What is TM30 All About? - Thailand Elite Visa
Simple Guide to TM30 Thailand Immigration Requirements
Receipt of Notification / T.M. 30 | THAI VISA-ILSCM
https://www.ilscm.net/receipt-of-notification-t-m-30-1
[31]TM30 Explained Register Any Non Thai National In Your Property!
Immigration Act, B.E. 2522 (1979) - Refworld
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[33]外国人を宿泊させた場合の届出 - 在チェンマイ日本国総領事館
https://www.chiangmai.th.emb-japan.go.jp/itpr_ja/residence_inform.html
[34]TM30 Guide: All there is to know for Landlords & Tenants
What is the TM30 immigration reporting process when staying at a ...
[36]バンコクの賃貸 TM30について - すずき不動産
https://www.bangkok-suzuki.jp/tm30.php
[37]TM30 - New website address for filing notifications and registration
[38]Immigration Act, B.E. 2522 | Thailand Law Library
Responsible hosting in Thailand - Airbnb Help Center
https://www.airbnb.com/help/article/2208
[40]FOREIGNERS STAYING IN THAILAND MORE THAN 90 DAYS -