「普通に見える人こそ要注意」という逆説

「微笑みの国」の影。タイで警戒すべき、近づいてはいけない人物たち。

「タイは微笑みの国」「タイ人は親切で穏やか」…ああ、もう聞き飽きたよな、その観光パンフレットの常套句。もちろん、それはこの国の紛れもない真実の一面だ。街角で困っていれば誰かが声をかけてくれるし、子供やお年寄りには滅法優しい。私もこの国に骨を埋めるつもりの人間だから、その魅力は嫌というほど知っている。

だがな、長年この国で飯を食ってると、その“微笑み”の裏側に潜む、もっと生々しい現実も見えてくるわけだ。光が強ければ影もまた濃くなる。これは世の常ってやつだよ。

最近じゃ、日本からタイに移り住む人たちの層も随分と変わった。昔みたいに、何かから逃げてきたり、一攫千金を夢見るギラギラした連中ばかりじゃなくなった。スマートで、真面目で、そして……人が良すぎる日本人が増えた。そんな“良いカモ”を、手ぐすね引いて待っている連中がいるのも、また悲しい現実なんだ。

断っておくが、これはタイやタイ人をディスりたいわけじゃない。むしろ逆だ。この最高にエキサイティングで居心地のいい国で、アンタがしょうもないトラブルに巻き込まれて、「もうタイなんて嫌いだ!」なんて泣き言を言わずに済むように、ジジイが老婆心で書き残す「転ばぬ先の杖」だと思ってくれ。まあ、ちょっと毒舌だが、それも愛情表現の一種だよ。

【要注意レベル1】あなたの時間と心を蝕む「テイカー」タイプ

まずジャブとして紹介するのは、直接的な大ダメージはないが、じわじわとアンタのメンタルとリソースを削り取っていく連中だ。良い人のフリして近づいてくるから、たちが悪い。

①「不幸話のコレクター」

こいつらは、まるで不幸な出来事を集めるのが趣味みたいに見える。「家族が病気で…」「バイクが盗まれて…」「田舎の家が洪水に…」と、会うたびに新しい悲劇をアップデートしてくる。その瞳は潤み、声はか細く、アンタの良心という名のドアを健気にノックし続けるんだ。

最初は「大変だな」と同情して、飯を奢ったり、数百バーツを渡したりするだろう。だが、それが間違いの始まりだ。一度味を占めると、彼らにとってアンタは「便利なATM」か「無料のカウンセラー」に成り下がる。断れば「日本人は冷たい」「困っているのを見て見ぬふりをするのか」と、今度は罪悪感を刺激してくる。まるで「同情のサブスクリプション」に強制加入させられたようなもんだ。

タイには**「ブンクン(บุญคุณ)」**っていう「恩」の概念がある。これがまた厄介でな。一度助けると、「私にはブンクンがあるから、次も助けてくれるはずだ」と、彼らの中では当然の権利に変換されちまう。こっちは親切心のつもりでも、相手にとっては「未来への投資」くらいにしか思われていない。笑っちまうよな。アンタの善意は、彼らにとって搾り取るべきジュースでしかないんだよ。

②「口だけ番長」

日本人の中にも、タイ人の中にもいるな、このタイプは。「俺は軍の偉いさんとツーカーの仲でね」「この土地は来年、政府の巨大プロジェクトで3倍に値上がりする情報を掴んでる」…まあ、口から出る言葉の景気がいいこと。まるで歩く経済新聞、いや、与太話新聞だ。

彼らは決まって、身なりや羽振りが良く見えるように演出するのがうまい。ちょっといいレストランで飯を奢ってくれたり、高級そうな時計(大抵は精巧な偽物だが)をチラつかせたりして、自分を大物に見せようと必死だ。

だが、よく観察してみろ。具体的な話になると、「まあまあ、それは追々」「今はまだ言えない極秘情報でね」とはぐらかすばかり。肝心なことは何一つ進まない。彼らの壮大なビジネスプランは、いつまで経っても企画書の1行目から動かないんだ。

こいつらに関わると、とにかく時間を無駄にする。「すごい人脈を紹介してやる」と言われて何ヶ月も待たされたり、儲かりもしない事業計画の壁打ちに延々と付き合わされたりする。タイの社会は、良くも悪くも「見栄」や「メンツ」が重要視される。だから、話を盛ることにあまり罪悪感がない人間もいるんだ。アンタが彼らの自尊心を満たすための観客に成り下がる前に、さっさとフェードアウトするのが賢明だ。「そのビッグプロジェクト、成功したら祝杯あげましょうね(笑)」とでも言って、二度と会わなきゃいい。

【要注意レベル2】あなたを“沼”に引きずり込む「トラブルメーカー」タイプ

さて、次はもう少し深刻な連中だ。こいつらと関わると、法的なトラブルや修復不可能な人間関係の泥沼に足を取られることになる。

①「ビザと法律の“裏道”専門家」

「正規のビザ取得は面倒で金もかかるだろ? 俺に任せれば、半額で、もっと良いやつが取れる」

こんなセリフを吐く自称コンサルタントがいたら、100%詐欺師だと思え。日本人にもタイ人にも、この手のブローカーは山ほどいる。彼らがチラつかせる「裏技」「抜け道」という甘い蜜は、猛毒だと心得ろ。

タイの法律、特にイミグレーション(出入国管理局)のルールは、担当官の裁量一つで変わるし、年々厳しくなっている。「昔はこれで大丈夫だった」なんて昔話は、何の慰めにもならない。非正規なルートで取得したビザは、いつ爆発するかわからない時限爆弾を抱えて生活するようなもんだ。

運が悪ければ、オーバーステイでブラックリスト入り。二度とタイの地を踏めなくなるかもしれない。最悪のケースでは、違法行為の共犯者として逮捕されることだってある。そうなってから「知らなかった」は通用しない。イミグレの薄暗い部屋で、言葉も通じない役人に詰問される恐怖を想像してみろ。そうなったら、アンタが信じた“専門家”はとっくにアンタの金を持って高飛びしてるさ。法の裁きより、イミグレのオフィサーの無表情な顔のほうがよっぽど怖いんだぜ、この国は。

②「嫉妬とゴシップの運び屋」

ああ、こいつも厄介だ。特に、我々日本人の狭いコミュニティに巣食う妖怪みたいな存在だな。彼らは、他人の不幸や秘密をエネルギー源にして生きている。

「ねえ、知ってる?〇〇さん、会社の若い子に手を出したらしいわよ」「△△さんの会社、最近うまくいってないみたい」

こんな感じでアンタに近づき、親しげにゴシップを提供してくる。だが、気をつけろ。彼らは情報を与えることで、アンタから新しい情報を引き出そうとしているだけだ。アンタがうっかり漏らした一言は、翌日の昼にはプロンポンのカフェで、尾ひれ背ひれがついて一大エンターテイメントとして消費されているだろう。

こいつらの真の目的は、コミュニティ内でのマウンティングと、他人の足を引っ張ることだ。アンタが少しでも仕事で成功したり、幸せそうにしていたりすると、途端に嫉妬の炎を燃やし、根も葉もない噂を流布し始める。バンコクの日本人社会なんて、東京のそこらへんの商店街より狭いんだ。一度ついた悪評を覆すのは、メコン川の水を飲み干すより難しい。

「君だけには話すけど…」は、「世界中に拡散してくれ」の合図だと思え。ゴシップには関わらない、聞かない、話さない。それが、この小さな村社会で平穏に生きるための鉄則だ。

【要注意レベルMAX】人生を破壊する「プレデター」タイプ

最後に紹介するのは、冗談じゃ済まない、明確な悪意を持ってアンタの全財産、いや、人生そのものを食い物にしようとする捕食者(プレデター)だ。

①「運命のパートナー(仮)」

特に、熟年の独身男性がよく餌食になるな。少し寂しさを感じ始めた頃に、まるで神様が遣わした天使のように、若くて美しいタイ人女性(あるいは男性)が現れる。出会って数週間で「あなたこそ運命の人」「愛してる」と、安っぽいメロドラマのセリフを連発。有頂天になったアンタが財布の紐を緩めた瞬間、ショータイムの始まりだ。

「お母さんが病気で手術代が…」「田舎の水牛が死んでしまって…」「弟の学費が払えないの…」

次から次へと繰り出される不幸のオンパレード。アンタは「愛する人を助けたい」一心で、なけなしの退職金や貯金を注ぎ込む。だが、その金が本当に家族の元へ届いている保証はどこにもない。彼女の故郷には、本物の旦那と子供がいて、アンタからの送金で建てた新しい家で笑っている、なんてのはよくある話だ。

タイでは家族を大切にし、仕送りすることが美徳とされる文化がある。それを逆手に取った、古典的だが破壊力抜群の手口だよ。恋愛感情が絡むと、人は驚くほど理性を失う。「彼女だけは違う」なんて思ってる時点で、もう詐GESHIに片足を突っ込んでる。寝言は寝て言えって話だ。

②「必ず儲かる投資家」

「元本保証で月利5%」「このコンドミニアムは絶対に値上がりします。私が裏ルートで仕入れた情報ですから」

ちゃんちゃらおかしいよな。もしそんな魔法みたいな話が実在するなら、なぜ赤の他人のアンタに教える必要があるんだ? 自分一人で、あるいは親族だけで独占すればいいだろう。答えは簡単、アンタから金を巻き上げること自体が、彼らの「ビジネス」だからだ。

彼らは、高級車を乗り回し、ブランド品で身を固め、SNSでリッチな生活をこれでもかと見せつけてくる。だが、そのほとんどはレンタル品か借金で固めたハリボテだ。そのキラキラした幻想でアンタの射幸心を煽り、冷静な判断力を奪う。

これは典型的なポンジ・スキーム(出資金詐欺)だ。アンタが出した金は、前の出資者への配当に回され、自転車操業を続ける。そして、新規の“カモ”が集まらなくなった瞬間に、首謀者はすべての金を持って消える。後には、借金と絶望だけが残る。経済成長著しいタイだからこそ、こういう「一攫千金」の話にリアリティを感じてしまうのかもしれないが、断言する。うまい話には、必ず裏がある。アンタの虎の子の金を、そんなハイエナにくれてやる必要はまったくない。

まとめ:危険人物を遠ざけ、良い縁を引き寄せるためのジジイの遺言

ここまで、うんざりするような連中の話をしてきた。気分が悪くなった奴もいるだろう。だが、彼らに共通する手口は、実は非常にシンプルだ。それは、**「アンタの良心、孤独、そして欲望といった“心の隙間”に巧みに入り込んでくる」**という点に尽きる。

じゃあ、どうすれば自分を守れるのか? 難しいことじゃない。ジジイからの遺言だと思って、以下の三つを肝に銘じておけ。

  1. 即断しない:うまい話や、緊急を装う助けの求めには、絶対にその場で応じるな。「一度持ち帰って、信頼できる人に相談します」と言って、必ず時間と心理的な距離を置け。本当に良い話なら、1日や2日待てないはずがない。
  2. 金の貸し借りはしない:「友人なら助けるべきだ」なんて綺麗事は、この国では命取りになる。貸した金は、99.9%返ってこないと思え。「あげる」覚悟がないなら、1バーツたりとも貸すな。それが、結局は相手との関係を壊さない最良の方法でもある。
  3. 第三者に相談する:少しでも「あれ、おかしいな?」と感じたら、それはアンタの直感が正しい。一人で抱え込まず、長くタイに住んでいる信頼できる友人や、大使館、商工会議所のような公的機関にすぐに相談しろ。客観的な意見を聞くだけで、熱くなった頭を冷やせる。

やみくもに人を疑ってばかりでは、せっかくのタイ生活もつまらないものになるだろう。だがな、自分の身を守る術を知った上で人と付き合うのと、無防備なままでいるのとでは、見える景色がまったく違う。

冷静な目と、時には「ノー」と言う勇気を持つこと。

それさえできれば、アンタはきっと、この国で最高の友人やパートナーを見つけ、本当の意味で豊かな人生を送ることができるはずだ。

それが、この面倒くさい国を愛してやまないジジイからの、たった一つの願いだよ。

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